「キャリー」「シャイニング」「ミザリー」「スタンド・バイ・ミー」「ショーシャンクの空に(原作:『刑務所のリタ・ヘイワース』)」「グリーンマイル」などの作品で知られる小説家、スティーヴン・キングの作品作りの習慣は示唆に富んでいます。
作った作品を6週間寝かせる
パン生地を捏ねる要領と同じで原稿をどれだけ寝かせるかは作者の勘一つだが、私は6週間を最低の目安としている。作者の意識はちょくちょく原稿に立ち返る。よく書けた記憶があって、自分も捨てたものではないと思うくだりを読んでみたい。誘惑に駆られて何度となく原稿を取り出そうとする。誘惑は断固として斥けなくてはならない。
はじめてこれを体験する作者は、6週間を隔てて自分の原稿を読むことの不思議な効果にさぞかし驚喜するだろう。自分の作品には違いない。ある箇所を書いている時、ステレオに何の曲がかかっていたかを思い出したりもする。にもかかわらず、他人の原稿を読んでいるような気持ちである。
6週間の回復期を経ると、作品の構成や人物造形に覆い難い欠陥を発見する。トラックで抜けられるほどの大きな穴である。長いこと来る日も来る日も原稿に向かっていながらどうしてそこにきづかなかったか、驚いて開いた口が塞がらない。
原稿を読み直して、メモ用紙に注意事項を書きつける。
私はこの作業が大好きだ。好きでしている商売だから、どの過程もみな楽しいが、とりわけ、自分の作品を再発見して愛着を深める推敲は性に合っている。
出典:小説作法
Recent Comments